TeamD/舞台版『さよなら鹿ハウス』作・演出の丸尾丸一郎さん&キャストの清水佐紀さんに直撃インタビュー!!
2018/11/07
「『デビュー』を観ている方々にはすごく響く作品だと思う。“自分たちも何かしら動かなきゃ!”と感じてもらえたら」
浅井リョウ原作 舞台「何者」、乃木坂46主演舞台「墓場、女子高生」や人気マンガ原作の『家庭教師ヒットマンREBORN!』the STAGE、AKB48主演の『マジムリ学園』(ドラマ・脚本/舞台・演出)など、話題作を次々と手がける劇団鹿殺しの丸尾丸一郎。彼の自伝的小説を原案とした、舞台「さよなら鹿ハウス」が、いよいよ11月8日(木)より幕を開ける。そこで、デビュー読者レポーターが熱気溢れる稽古場に潜入し、作・演出の丸尾さんと、キャストの清水佐紀さんの二人に直撃インタビュー!!
――今回、主演の渡部豪太さん以外のキャストはオーディションで決定されたということですが、オーディションで重視していたポイントを教えてください(田中)
丸尾「今回は僕の自伝的小説の舞台化ということで、かつていた劇団員に少し空気感が似ている子という点をポイントに選考して。生きている感じがするというか、ファンタジーではなくリアリティな感じの匂いが漂ってくる子を基準に選考しました」
――清水さんもオーディションを受けられたんですよね?緊張ってしましたか?(松谷)
清水「はい!緊張しました。私、これに限らずなんですが、オーディションを受けに行くときっていつも緊張するんです。今回はワークショップ形式のオーディションで、10〜15人くらいの人数でグループを組んで行ったんですが、1グループでも人数が多いし、しかもみなさん個性の強い方が多くて。正直“これは、私は受からないだろうな”って心の中で思っていました」
――実在した人物に照らし合わせてのキャスティングということで、難しかった点はありましたか?(田中)
丸尾「オーディションを見るときって、踊れるかどうかというスキルを見たりするのは簡単なんだけど、会話ができるかどうかを見るのってすごく難しいんです。どうしてもオーディションだと、一人芝居のようなものだったり、芝居で会話してもらうことがあっても断片的なものだったりするから、お芝居ができるかどうかというのを短時間で見極めるっていう点はいつも難しいなって思います」
――ワークショップ形式のオーディションを採用したというのも、そういう点が大きかったんですか?(田中)
丸尾「そうですね。極力そういう点を見たかったので。あとは舞台って、1ヵ月間カンパニーのみんなで一緒に作り上げていくので、10〜15人くらいのチームを組んでもらって、運動とかもやりました。一緒に運動して休憩を過ごすっていうときに、グループの中でどういう居方をするのかっていうのを見るために、そういうことをしました」
――グループでのオーディションって、初対面の方ばかりで難しそうですね(松谷)
清水「私は人見知りなので、すごく緊張しました。オーディションを受けに来られている方はみなさん初めましての方々だったので、どういう人かわからない中で、二人で一緒に会話したり、お芝居をしたりするのって、けっこう難しくて。いつも以上に緊張感がありました」
丸尾「初対面の人と一緒にお芝居するって、けっこう恥ずかしかったりするよね」
清水「はい。それに2人組で芝居をするとき、残りの人たちが観ている前でやったりするので、よりプルプル緊張で震えてました(笑)」
――そんな状況下でも清水さんには光るものがあったんですね?(松谷)
丸尾「思っていた以上に、いい意味で人間味があってそこがいいなって思ったんです。元アイドルって、あくまでもイメージですが表面上な感じがしていたんだけど、キャプテンはそうじゃなくて、さっきも言った“生きている”感じがした。ただ、今回女性キャストをどこかしらに入れたいなと思ってはいたんですが、実はオーディションの時にはまだどんな風に物語に入れたらいいのか決めてなかったんです」
――清水さんと玉川(来夢)さんが演じる女子高生役は、原作にはない舞台オリジナルのキャラクターですよね(田中)
丸尾「そうなんです。キャプテンとか来夢ちゃんとか、数人気になる子がいて、どういう役柄で入れられるかなって考えたときに、今回はどうしても主人公がすごくしゃべるから、違う目線のキャラクターとして間に入れていってあげると面白くなるかなって思って。それで、劇団員が共同生活を送っている東久留米という同じ町に住んでいる女子高生という役で、キャプテンと来夢ちゃんの2人がシーンの合間、合間に出てくることによって、劇団員の彼らがズレているっていうところが客観的にわかりやすくなるんじゃないかなと思って、オーディションしている最中に二人の役を決めていきました」
清水「オーディションでやった運動がけっこう筋トレみたいな感じのもので、けっこうヘロヘロになっていましたし、翌日の筋肉痛が大変でした。衰えを感じました。昔はあんなに動いていたのに、おかしいなと(笑)」
――そうなんですね(笑)。清水さんは、台本を読んだとき、どんな印象を受けましたか?
清水「私はもともと小説にはなかった女子高生という役なので、台本をいただいたときは、どういう役なんだろうとワクワクしながら読みました。女子高生って、年代によっていろんなタイプがあると思うんですけど、鹿ハウスが存在した時代は2005年ごろなので、その年代の女子高生ってどんな感じだったんだろうということを、いろいろと調べて勉強しました。稽古を重ねるうちに、これをやってみようとか、新しいものが見つかるので、日々楽しいです」
――ちなみに、稽古に入って気づいた清水さんの新たな一面はありますか?(田中)
丸尾「器用な子だなって思いました」
清水「え〜!? 本当ですか?」
丸尾「僕はもともと女性が高い声を出すのがあまり好きではなくて。演劇のキャリアがなかったりすると、どんどんうわずってしまって、重心が上がっていってしまうんです。キャプテンにも1回だけ『声のキーが上がりすぎている』って言った気がする」
清水「はい、言われました」
丸尾「でも、次からそれを言ったことはないから、ちゃんと下げるということを自分の中で意識しているし、そのコツをもう掴んだんだなと。直すべきところを明確にわかっているし、人によってはいつまで経っても直らないという場合もあったりするんだけど、1回言ったことをきちんと改善でいるというのは、賢い子だなって思います」
――なるほど!(田中)。
丸尾「キャプテンと来夢ちゃんは、パート的に笑いを求められる役柄だからけっこう難しいよね。喜劇って、悲劇よりも俯瞰性があって、笑われているっていうことを自分で作りださないといけない。お客さん目線になって、いかに自分がボケられるかという目線が必要だから難しい。でも、今そこに果敢に挑戦してくれているから、本番にはきっと二人のシーンが救いのようになってくれると思います」
清水「とても難しいですけど、一生懸命頑張ります!!」
――こうしてお話をさせていただいているときの清水さんの声が、さきほど稽古で出されていた声と全然違っていてびっくりしたんですが、どんなところを意識しているんですか?(田中)
清水「稽古の映像を録画してくださっているので、それを家に帰ったときに観て、“ここは聞き取りづらいな”とか確認をして。1回ご指導いただいたことはもう言われないように頑張るって、自分の中に叩き込んでいます。自分がお芝居しているのを見返すのは、正直恥ずかしい気持ちがあるんですが、それを押し殺して、毎回見返して学ぶっていうのをいつも意識するようにしています」
――稽古場で心がけていることなんですか?(松谷)
清水「私はスイッチのオンオフです。稽古場に入る前はいつものようにダラ〜っと人間味を出して来るけど、稽古場に到着してやるってなったときにスイッチをオンにする。やっぱり稽古時間というのは限られているので、その時間だけは集中してやっています」
丸尾「僕は、役者よりも、稽古場の中で一番テンション高くするようにしています。それはどこの現場でもそうなんですが、僕の作品は、熱さだったり、ぶつかり合いっていうのを重視しているので、役者にも同じようにテンションを上げてもらいたい。なので、みんなを鼓舞するような感じで、稽古場の空気をそういう風にするというのを心がけてます」
――この作品をどんな人に観てもらいたいですか?(田中)
丸尾「それこそ『デビュー』を見ている方とかにはすごく響くと思います。僕が27歳〜29歳の時の話なんですが、(芝居で)ご飯を食べられるようになることがプロになることだ!っていうのをすごく意識していて。とにかく早くバイトを辞めたくて、関西ではダメだと思ってみんなで上京してきて。なんとか路上パフォーマンスや共同生活という方法を見つけて、みんなでがむしゃらにやってきたっていうのを描いているので、僕らのことを真似してほしいということではなくて、観た方が“自分たちも何かしら動かなきゃ!”ということを感じてもらえたら幸いだなって思います」
清水「これは原作の小説を読んだときにも思ったことではあるんですが、諦めなければ想いは届くんだなって改めて思いました。『劇団鹿殺し』さんといえば、演劇界では誰もが知っているような存在ですが、実はこんな始まりがあったというのを私は今まで知らなくて。きっと、楽しいことばかりではなく、大変なことをいろいろ乗り越えた上で自分の夢が叶うと思うので、そういう想いがちゃんと伝わるように、私も頑張りたいなって思います」
――では最後に、芸能界デビューを目指す読者に向けて、お二人が思う“夢を叶えるために大切なこと”を教えてください。
清水「努力は絶対に無駄にはならないと思います。その結果がたとえ自分が思い描いていたものにならなかったとしても、その間にやった努力は絶対に無駄にはならないと思うし、私はそう思ってこれまでやってきました。なので、努力することは大切なことだと思います」
丸尾「芸能界って、選ばれた人たちがいっぱいいて、自分ができないことをいろいろとできる人がたくさんいる世界なんですよね。その中に入って勝っていこうとするならば、自分に対して1つ1つ明確に成長するための課題を与えてそれをクリアしていくことが大事だと思う。たとえば、僕だったら、この顔と容姿を持って、何をスキルとして身に着けていって、どの一角に行けるのかということを客観的に考えてやっていくことも必要。ただあてもなくがむしゃらに頑張ればなんとかなる世界ではないと思うので、1個1個、階段を上っていくように、スキルを身に着けていくことが大事なのかなと思います」
――ありがとうございました!!(田中&松谷)
丸尾丸一郎(まるお・まるいちろう)●5月1日生まれ、大阪府出身。2001年に演劇サークルの後輩であった菜月チョビとともに「劇団鹿殺し」を旗揚げ。以降全作品に出演するほか、劇団鹿殺し第四回公演『愛卍情』以降、全作品の脚本を手がける。近年では、劇団公演以外にも、乃木坂46主演舞台「墓場、女子高生」や朝井リョウ原作の舞台「何者」の演出、秋元康プロデュース「劇団4ドル50セント」の脚本・演出、朗読劇「予告犯」の演出、『家庭教師ヒットマンREBORN!』the STAGEの脚本・演出など、話題作を数多く手掛ける。
清水佐紀(しみず・さき)●1991年11月22日生まれ、神奈川県出身。2004年よりBerryz工房のキャプテンとして活躍。2015年に同グループが無期限活動停止になることに伴い、ハロー!プロジェクトを卒業。2017年からタレント・女優としてソロ活動中。2019年1月に上演される、「銀岩塩Vol.3 LIVE ENTERTAINMENT『牙狼(GARO)神ノ牙-JINGA-転生』〜消えるのは俺じゃない、世界だ。〜」への出演も決定。
OFFICE SHIKA PRODUCE『さよなら鹿ハウス』
東京公演:2018年11月8日(木)〜18日(日)座・高円寺
大阪公演:2018年11月22日(木)〜25日(日)HEP HALL
劇団鹿殺しの丸尾丸一郎による自伝的小説を舞台化。丸尾が代表を務める劇団鹿殺しが、劇団員7名で上京し、共同生活をしながら伝説になろうとした記録を描く、七転八倒の青春物語。
≪あらすじ≫
つまずきだらけの「劇団鹿」7人は、旗揚げした関西に逆ギレをかまし、オンボロのハイエース1台で上京。ドMの男6人とドSの女1人のヒエラルキー集団は、東京北西端・東久留米に家賃13万円の城「鹿ハウス」をかまえ共同生活を始める。バイトを禁じ、関係者との恋愛を禁じ、ただひたすらに「伝説になる」ための研鑽を誓った約束の2年間。伝説になりたくて、がむしゃらに心と身体を燃やすしかなかった、7人が確かに生きていたんだ――。
松谷有菜「稽古を見学させていただいて、みなさん全力100%でぶつかり合ってやっているんだなというのを見ていてすごく感じました。路上パフォーマンスのシーンの稽古のときは、稽古をみている感覚ではなく、勢いがすごくて、本当に路上パフォーマンスを観ているような感覚になって圧倒されました。
丸尾さんと清水さんにお話を聞いて、印象的だったのは、『諦めなければ想いは届く』『努力は絶対無駄にならない』という言葉です。それと、オーディションではどんなところを見ているのかというのを聞くことができて、参考になりました。どうしてもオーディションでは緊張して自分を作ってしまうこともあるけど、その人の素をちゃんと見ているんだなっていうことが知れて良かったです。
今回参加させていただいて、今までは“オーディションがあったらとりあえず応募する”というような、行き当たりばったりな感じだったけど、丸尾さんのお話を聞いて、それではダメだなと気づきました。まずは自己分析から始めて、1つ1つ明確に目標を決めて、計画性を持って、目指していきたいなと思いました」
田中夏霧「稽古場に入る前に、けっこう分厚い扉から聞こえる声が想像していたよりもすごくて衝撃を受けました。舞台の稽古を見学させていただくのは、今回が初めてだったんですが、稽古場に入ったときの熱気もすごかったですし、声の出し方一つとっても私にはすごく新鮮でびっくりすることが多かったです。
丸尾さんと清水さんにインタビューをさせていただいて、『1つ1つ目標を決めて、それをクリアしていくことが大切』というお話がとても印象に残りました。清水さんが『諦めなければ想いは届く』とおっしゃっていましたが、同じ諦めないでやるということに対しても、ただがむしゃらにやるのと、1つ1つちゃんと目標を定めてやることでは違うんだなって思いました。
どういう役者になりたいかというのは、今の段階ではまだ模索している最中なのですが、私もきちんと自分に対して課題を見つけて1歩ずつ前に進んでいきたいなと思いましたし、みなさんのように、1つの作品を1ヵ月とか本気で打ち込むことができる役者になりたいです」
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